交通事故・後遺障害
交通事故の賠償金はいつ頃受け取れるのか
1 受け取れる時期について
交通事故の賠償金を受け取れる時期は、示談成立後、大体1~3週間以内です。
裁判の場合は、確定判決または和解成立後1か月以内とされることが多いです。
2 説明
⑴ 示談の場合(任意保険会社対応)
示談書(承諾書、免責証書)を取り交わしてから、支払いが行われます。
実務上は、示談書への署名・捺印をして、当該書面が保険会社に到着して、担当者が事務処理をし、決裁が通れば、被害者指定の口座へ振り込まれます。
示談金額の多寡にもよりますが、おおむね1~3週間程度が標準的な期間だと思います。
まれに遅延する場合がありますが、その場合は担当者が忙しかったり、そもそも処理を忘れてしまっていたり、必要書類が不足していて決裁を通せないということもあります。
⑵ 訴訟や調停の場合
この場合、判決確定または和解成立後に支払われます。
通常は和解調書や判決送達後2~4週間以内の支払いが多いです。
⑶ 後遺障害がある場合
この場合には、自賠責の後遺障害等級認定後でないと、賠償額が確定しないため、支払いはそれ以降になります。
後遺障害等級認定がされるまでには、症状固定になってから、申請準備に1~2、3か月、申請してから結果判明までに1か月半~2、3か月程度かかります。
事案によっては、もっと時間がかかることもあります。
3 まとめ
⑴ 後遺障害もなく示談で終わる場合
治療終了後、おおむね1~2か月後には、賠償金を受け取れると思います。
もちろん、資料収集に時間がかかったり、示談金額がなかなか決まらない場合には、もっと時間がかかってしまうことはあります。
⑵ 後遺障害がある場合
後遺障害等級が決定するまでには、症状固定から約3~4か月かかります。
初回の申請で妥当な等級が認定されなかった場合には、異議申立てを検討することになり、異議申立てをすることになれば、等級決定までにさらに時間を要します、
異議準備→異議申立て→等級の有無決定までに半年以上かかってしまうことも珍しくありません。
等級の有無が決定してからは、損害額の算定で事案の難易度にもよりますが、資料の集まり具合によっては、1週間~1、2か月程度かかることもあります。
⑶ 訴訟をする場合
訴訟をする場合には、訴訟提起から和解や判決獲得までに1年~1年半程度はかかるのが通常です。
場合によっては、2年以上続くこともなかにはあります。
交通事故で裁判になるのはどのような場合か
1 交通事故で裁判になる場合とは
⑴ 相手方と話がつかなかった場合
多くの場合、裁判を起こす前に、話し合い(示談交渉)で損害賠償額を決めようとしますが、金額が折り合わなかった場合には、これ以上、話し合いに時間をかけても無駄になることが多いため、裁判を起こすことになります。
⑵ 金額が折り合わない場合とは
金額が折り合わない場合は、様々な理由が考えられます。
治療期間に争いがある場合、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益、過失割合に争いがある場合などです。
⑶ 加害者側から裁判を起こされることもある
多くの場合は、被害者側から加害者側に裁判を起こすのですが、加害者側からも、〇〇〇万円以上の損害賠償債務はない(加害者側が、通院が長すぎると争っている場合など)という債務不存在確認訴訟という裁判を起こされることもあります。
⑷ 死亡案件の場合
死亡案件の場合、後遺障害案件のように、後遺障害等級、労働能力喪失期間、労働能力喪失率などのように争いが長期化することはそこまで多くありません。
争われるとしたら、過失割合です。
死亡案件の場合は、死亡慰謝料(近親者慰謝料含む)の評価がメインともいえます。
示談段階では、保険会社が裁判でないと裁判基準の高い金額で賠償できないといわれることがほとんどです。
2 裁判が終わるまでの期間
訴訟提起の準備には、ケースバイケースですが、1か月前後はかかると思ってください。
他の案件との兼ね合いにより、もう少しかかってしまうこともあります。
裁判を起こしてから、第1回目の裁判期日が開催されるまでに、通常1~2か月かかります。
裁判が何回行われるかは、ケースバイケースですが、裁判が終わるまでには、通常半年~1年くらいはかかることが多いです。
もちろん、半年未満で終わることも、1年以上かかってしまうこともありえます。
交通事故について示談で解決するメリットとデメリット
1 示談とは
示談とは、当事者間の話し合いにより、もめごとを解決することをいいます。
民法上では、和解契約(民法695条)にあたります。
2 示談のメリット
⑴ 早期解決
示談の場合は、裁判と比べると断然早く解決することができます。
裁判の場合は、訴訟提起に時間かかったりしますし、裁判になってからも、次の裁判までの期間が、1か月強から場合によっては2か月程度(医師の意見書取り付けなどの場合はもっとかかってしまうこともあります)かかるのが普通ですので、裁判をすると、最低でも半年~1年程度(場合によってはもっと長くかかってしまうこともあります)解決までに時間がかかってしまうのが普通です。
この点、示談の場合には、案件によっては、1か月程度で解決してしまうことも多いため、解決までの時間が短く済むのが示談の最大のメリットといえるかもしれません。
⑵ 裁判というストレスがない
裁判をすると、こちらの主張に対し、相手方が弁護士を通じて反論をしてきます。
その反論が、被害者にとっては、かなりのストレスとなります。
被害者はこんなに辛い思いをしているのに、相手方からは、そんなにたいしたことないでしょというような反論を受けるからです。
特に、後遺障害の等級の妥当性や、賠償金の結果に大きくかかわってくる争点(過失割合、逸失利益の労働能力喪失率や期間など)が争われている場合には、被害者にとっては、かなり大きなストレスとなることでしょう。
3 示談のデメリット
示談では、裁判での解決に比べると賠償金が低めになりやすい傾向にあります。
示談で解決する場合には、例えば、慰謝料の金額が、裁判基準の金額の8~9割程度での解決とされる傾向にあります。
弁護士によっては、示談でも、裁判基準の100%での解決を目指して交渉する弁護士もいますが、そもそも保険会社が、示談段階では、裁判基準の9割までしかださないと決めてしまっている場合があります。
どうしても、裁判まではしたくないとか、裁判をすると示談段階での最終提示よりも金額が下がってしまうリスクがある場合などは、不用意に裁判することはせず、示談に応じることもあります。